がふっ。

 望んでも手にすることができないもの、できなかったものはすべて、綺麗さっぱり忘れる、気にしない。それが自分の性格だと思っていたのに。見目麗しい容姿だとか、子供を産み育てることのできる満ち足りた内面だとか。そういった、最早手に入らないものを他人の中に見いだして勝手に憎んでいる自分に気づいて、立ち直れないんじゃないか、ってくらい落ち込んだ。瞬間、倒れそうなくらい自分が嫌になった。存在、することが許せない。気持ち悪い。目を閉じて、耳を閉じて、口を閉じて、息を閉じて、すべてをお終いにしてしまいたかった。
 憎しみとか羨みとか妬みとか、そういう感情は嫌いだ。見たくない。持っていることすら許せない。完璧じゃないことを完璧に自分に飲み込ませて、これまで生きてきた。…そういう、つもりだった。
 もう、過去のことだけれど。