空から剃刀が降ってくる。

ボクの表皮に降ってくる。
狂気を哂うように降ってくる。

数え切れないくらい大量に。
抗いきれないくらい切実に。
雨のように静かに降ってくる。
垂直に斜めに降ってくる。
切り裂くように降ってくる。

だからいつでも傷だらけ。
この創を躯に刻んだのはボクじゃないから。
だから誰も、責めないで。

刻んだのは誰でもないから。
神様にだって文句は云えない。
だからキミを、責めないで。


そんな空想に時々、襲われる。
ほんとに降ってきたらいいのに、とたまに憧れる。
そしたらきっと、受け止めて受け入れて赤く塗れて。
仕方がなかったんだよ、って微笑えるのに。

いつだって刻もうとするのは自分だから、ぎりぎりのところで踏みとどまる。
自分との誓い、大切な人との誓い、大事な人達との約束を守るために。